なぜ山に登るのか(北岳登山)
登山口まで乗る南アルプス林道バスの運転手さんが周辺の案内と共に変なことを言い出した。
「この山に登るとね、必ず山頂ではどうしてここに来たのかと尋ねられるんですよ。」と。
何のことだろうと思って聞いていたら、運転手さんは、
「そう尋ねられたら、こう答えて下さい。来ただけ。……きただけ……北岳(笑)」……
そんな、南アルプスの「北岳」に8月15日16日に登ってきた。
戸台口に前夜泊し、6:00発一番の林道バスで北沢峠。さらに峠でバスを乗り継ぎ広河原へ7:50着。
吊り橋を渡り、広河原山荘横の登山口より8:00過ぎに登り始める。
天候は曇りで、山頂付近にはどんよりと雲がかかっている。
涼しくて良いが、上では雨が降っているとの話もあり、天候回復を期待しながら、登る。
山頂への道が右俣と左俣に分かれる二俣には10:10着。ほぼコースタイム通り。
雪渓が残っていて涼しい風が吹き渡るが、相変わらず山頂付近はどんより。
二俣で、おにぎりを囓り小休止し、10:50に再スタート。
右俣コースを小太郎尾根分岐まで、汗をふきふきひーはーと登る。なかなかしんどい登り。
ところが、izumiちゃんは案外元気で、こちらの方がバテ気味なくらい。なんてこったい。
小太郎尾根の分岐まで約2時間かかって、12:45着。これもほぼコースタイムどおりで順調。
ここまでくれば本当は素晴らしい展望のはずが、すっかり雲の中。まわりはガスってなにも見えない。残念。数十メートル先も見えないくらいなので、ルートを見失わないよう注意しながら、今日泊まる北岳肩の小屋まで最後の登りをガスの中もくもくと歩く。少し酸素も薄くなってきたのかあるいはバテているのか、息があがる。
ぜーぜー言いながら、北岳肩の小屋に13:15に無事到着。
ガスって展望もないし、いわゆる昔ながらの山小屋なので、16:00からの夕食の他は特にすることもなく、毛布をかぶってごろごろして過ごす。
夕食後も、所在なく過ごしていたら、突然「見えてきたよ~」の声が。小屋にいたみんなが外に飛び出す。
すると、今まで見えていなかった、仙丈ヶ岳、甲斐駒ヶ岳、そして、北岳が姿をあらわす。
夕焼けに染まる空と山々。その色は、時間とともに刻々と変化していく。
息を飲む素晴らしさ。言葉になんてできない。
景色を見て感動して涙するなんてことがあるのかと思っていたが、このときは思わず涙しそうになった。それくらい素晴らしい夕焼けだった。
日没とともに、小屋に戻り、横になっていたら、7:00には寝てしまった。
夜中、トイレに起きたら満天の星。星に手が届きそうとはこのこと。あまりに星が多すぎて、星座がわかりにくいほど。
翌朝は晴れ。さすが、晴天無風女izumiさま。
ご来光とともに富士山がどーんと見える。思わずヨロシクお願いしますと拝んでしまう。
ご来光を拝んだあとは、5:10に山頂に向けてGO。
最後の登りをがんばり。5:50に北岳(3193m)登頂成功。やりました。
登頂してしばらくするとかかっていたガスがどんどん晴れて、360度のパノラマ。
間岳から農鳥岳も見える。
山頂でしばらく過ごし、6:30に下山開始。
八本歯のコルから左俣コースを下る。
八本歯のコルにはハシゴが多い。
左俣コースの雪渓。今年は残雪が多いとのこと。
9:20に二俣着。ここからは、昨日来た沢沿いの道を下山。
11:35に無事登山口の広河原に到着。
すると、僕らの到着を待っていたように北岳が雲の中に姿を隠してしまった。
本当に天候に恵まれた、素晴らしい山行になった。
何に感謝すればよいのか、ともかくありがとうございました。
なぜ山に登るのか。その答えがあったような気がする。